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江の島・片瀬漁港のイワシで「鵠沼魚醤」-市内飲食店で魚醤料理の提供も

江の島と漁船をラベルにデザインした「鵠沼魚醤」

江の島と漁船をラベルにデザインした「鵠沼魚醤」

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 江の島片瀬漁港で水揚げされたイワシと天然塩だけで作った調味料「鵠沼魚醤(くげぬまぎょしょう)」の販売が10月に始まり、1カ月が過ぎた。市内飲食店では魚醤を使った新メニューも提供している。

商品を手にする「湘江亭」の高橋さん

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 同商品は、ダイニングバー「湘江亭」(鵠沼石上1)を営む高橋睦(むつみ)さんが8年ほど前から自店の料理に使ってきた魚醤を商品化したもの。2年ほど前、鵠沼地区の市民参加会議が地産品おこしのプロジェクトを開始。地元で揚がったイワシを使った高橋さんの魚醤が話題となり、地域の新ブランドとして飲食店や家庭に広めることになった。

 魚醤は、古代ローマ時代にヨーロッパで使われ始めたとされる魚類を主原料とした液体調味料。魚のたんぱく質が分解されてできたアミノ酸を豊富に含み濃厚なうま味があり、タイのナンプラーやベトナムのニョクマム、国内では秋田のしょっつるなどが知られている。「文献としては残されていないが、魚醤は日本でも沿岸部各地で古くから作られ、庶民の味として日本の食を支えてきたはず。そんな『古くて新しい調味料』をよみがえらせたいと作った」と高橋さん。

 独特の臭みがあることで知られる漁醤だが「鵠沼魚醤に嫌な臭みはなく、むしろ香ばしい香りがする」という。仕込む前の魚の状態が臭いを左右するため、イワシを鮮度のいい状態で朝早く仕入れ、うろこを落とす作業で魚の身が緩まないよう水が冷たい12月~3月に短時間で仕込む。数カ月すると、たるの下部にイワシの骨やアラが沈殿し上部に脂分が浮かび、その中間の部分を漉(こ)して1、2日すると透明の魚醤になる。魚醤そのものに味はなく「あるのは塩気とうま味。素材の味を生かせ、野菜炒めや刺し身などにもよく合う」という。

 かつて旅行会社に務めていた高橋さん。ヨーロッパでは生ハムやアンチョビー、調味料なども自家製で、味も店ごとに個性があることを肌で感じてきた。「個性には努力が必要で、多様性を認め受け入れてこそ真の豊かさでは」と、多様な分野で画一化が目立つ昨今を危惧する。「鵠沼魚醤を飲食業、ひいては社会の豊かさを実現する手段の一つとして一石を投じたい。一般の方には、ゆっくりでいいので魚醤のことを理解して日々の食卓に生かしてもらえたら」と話す。

 魚醤料理とボトルは「湘江亭」をはじめ、和食、韓国料理、カフェなど市内12の飲食店で扱う。ボトルは、江の島片瀬漁港(片瀬海岸2)、丸代商店(江の島1)、JAさがみわいわい市(亀井野)で販売しており、ボトルの売れ行きは上々という。

 価格は1瓶840円(200ミリリットル)。問い合わせは藤沢市鵠沼市民センター(TEL 0466-33-2001)まで。

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