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茅ケ崎でフリー音楽イベント、マウイ島火災と能登半島震災復興支援も

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昨年の荒天による中止から2年ぶりの開催

 5月5日(日)、茅ケ崎市東海岸ヘッドランドビーチ(茅ケ崎市東海岸南6)で無料音楽イベント「PEACEFUL EASY FEELING Free Concert at Chigasaki Beach」が開催開催された。このイベントは、2002年に同地で始まった。Bread & Butter(以下、ブレバタ)南佳孝を中心に、茅ケ崎や出演アーティストとのゆかりがあるミュージシャンが集まり、数年に渡って賑々しく行われた。当時の模様は、「PEACEFUL,EASY FEELING“MUSIC DAY 2005 at 茅ケ崎東海岸ヘッドランドビーチ”」として、DVD化もされた。

ハンドメイドなローカルさのステージ周り(photo by橋本おさむ)

ハンドメイドなローカルさのステージ周り(photo by橋本おさむ)

 一昨年にこのイベントが約20年ぶりの復活を果たしたとき、当時を知る人から若者や子ども連れまで幅広い客層が集まり、大成功となった。それを受けて、昨年9月に連続開催が決まった。ハワイ州マウイ島の火災復興支援として「PEACEFUL EASY FEELING on the beach live PRAY FOR MAUI」のタイトルで開催予定だったが、台風の影響で中止に。今回は万全を期して、早くも夏到来を思わせるような晴天のなか、無事に開催された。

ビーチを埋め尽くした観衆(photo by橋本おさむ)

 イベントグッズのデザインは、茅ケ崎FM関連デザインも手掛けている湘南出身の人気ファインアーティスト、RYU AMBEさんが手掛けた。会場では、彼のデザインによるマウイ島復興支援Tシャツ(スタッフも着用)とステッカーが販売され、好評を博した。

RYU AMBEさんデザインTシャツ(photo by橋本おさむ)

青いタイムテーブルがビーチに映える(photo by橋本おさむ)

 ステージ脇にはDJブースが設けられ、茅ケ崎に関わる4名のDJが開演前や転換時に、ビーチによく似合う気持ち良い音楽を流していた。そのDJのなかには、茅ケ崎FMのDJとしても活躍している、宮治淳一さんの姿があった。宮治さんは、桑田佳祐さんと小·中学生時代からの友人であり、「サザンオールスターズ」の名付け親としても知られている。開催に先立ち、茅ケ崎FMやFM横浜で活躍されている龍口健太郎さんがMCとして、挨拶と進行を始めた。

 ステージ転換の最中もDJが会場を気持ち良く繋いでいた(photo by橋本おさむ)

茅ケ崎ゆかりの出演者たちがステージを彩る

 ライブは、茅ケ崎出身のアマチュア女性ボーカル、YUZUさんがトップバッターで登場。サポートのアコースティックギターは実兄の森友二さんで、プロサーファーとしてジュニア大会優勝経験がある注目の選手。兄妹で茅ケ崎からさらなる飛躍が期待されている。

茅ケ崎市民期待の兄妹(photo by橋本おさむ)

 続いてイギリス人ふたりによるユニット、Morgan Paul&Mancelの登場。サポートパーカッションとして、山下達郎さん、大貫妙子さん、村松邦男さん、寺尾次郎さんらとシュガー·ベイブで活躍した上原”ユカリ”裕さんが加わった。

上原さんは後半フル出場の活躍(photo by橋本おさむ)

 Daviesさんは日本のゴールデンウィークに合わせて来日し、Paulさんと2人で京都、広島、東京とツアーを行ってきた。イギリス人ふたりが奏でるステージで、会場の雰囲気は一変し、まるで海外フェスのような味わいに満ちた。Daviesさんは翌日も茅ケ崎でライブを行い、帰国する慌ただしいスケジュール。

海外旅行に来たような贅沢な時間(photo by橋本おさむ)

 そして1998年メジャーデビューのベテラン女性ソロシンガー、我那覇美奈さんが登場すると、伸びやかなボーカルで一気に会場を包み込んだ。鹿児島県名瀬市(現奄美市)出身の彼女は、茅ケ崎でも多く活動していて、声が海と溶け込んでいるよう。砂浜では、彼女の名前を大きく書いた、手作りの応援グッズで盛り上げる熱心なファンたちが声援をあげていた。

圧巻のボーカルでみんなが聴き惚れた(photo by橋本おさむ)

 個々でも幅広い活動が人気である、ハーモニカの倉井夏樹さんとボーカルの倉井智佳子さん夫妻にドラムの鈴木正敏さんによるKURAI FAMILY BANDが続いて登場。次に、湘南を中心に活躍する詩人でありシンガーソングライターのAKISUN MADEさん、バンドやソロでの音楽活動だけでなく、人気リアリティショーテレビ番組「テラスハウス」出演や個展開催など多彩な活躍をしているKENNYさんと、潮風と波音が似合う気持ち良いアコースティックのステージが続いた。

ハーモニカの音色が心地よく絡む(photo by橋本おさむ)

散歩中の人が足を止めて集まってきた(photo by橋本おさむ)

ゆるやかな時が流れる(photo by橋本おさむ)

 真夏のような日差しが照りつける会場では、スポンサーであるコーセーがサンカット商品のサンプリングを行い、転換中のMCで龍口さんが紹介するや、希望者が配布場所に押し寄せる盛況を見せた。

大盛況のサンプリングブース(photo by橋本おさむ)

 出演者のテント前では鉄板焼きが振る舞われ、出番を終えた出演者が次々とやって来ては、飲み放題のビールを片手に舌鼓を打っていた。

ビールのお共に好評だった(photo by橋本おさむ)

 後半戦に入り、ステージは大所帯のBread & Butter Tribute が登場。AISAさん、我那覇美奈さん、倉井智佳子さんの女性ボーカル3人が並び、爽やかで力強い歌声を響かせた。サポートドラマーには、上原さんが再び合流。また、AISAさんとTEXLYNXというバンド活動を行なっているギタリストの徳武孝音さんが参加。彼の父は、大学生時代にブレバタのサポートメンバーであった、日本のカントリーギターの第一人者である、徳武弘文さん。まさに、ブレバタの音楽を継承するトリビュートバンドといえる。上原さんと徳武さんはこのままエンディングまで演奏に参加した。

三者三様の個性が混ざり合う

三者三様の個性が混ざり合う

3人のボーカルが潮風に乗って広がっていく

 茅ケ崎在住者には馴染み深いブレバタの名曲を次々と歌うにつれ、ビーチのあちこちで観客が踊り出したり、一緒に歌い出すなど盛り上がっていった。AISAさんがブレバタの岩沢幸矢さんの実娘だと話すと、会場のあちこちから、知らなかった!と驚きの声があがった。そして岩沢幸矢さんがステージに招かれて登場し、ハーモニカで参加し、代表曲「湘南ガール」を一緒に演奏し始めると、会場は大歓声となった。

岩沢幸矢さんの登場で観客は総立ちに

岩沢幸矢さんの登場で観客は総立ちに

 その熱狂を受けたまま、ブレバタのステージへとバトンタッチ。スペシャルゲストには、藤沢市出身で、昨年から山下達郎さんのツアーバンドに加入した、日本を代表するギタリストである鳥山雄司さんが登場。一気に音も引き締まった。

ともに日本音楽界を牽引してきた盟友の共演(photo by橋本おさむ)

 幸矢さん・二弓さんの岩沢兄弟による爽やかなハーモニーは、観衆を魅了した。そして、誰もが聴いたことがあるヒット曲「ピンク・シャドウ」で、総立ちの観衆は両手を挙げて大喝采を送った。

ピースフルな時間を演出

代表曲が始まると全ての観客が総立ちに

 ステージは、トリの南佳孝さんが登場。甘くて落ち着いたボーカルが小気味良いラテンのリズムに乗り、砂浜で裸足になって体を揺らして聴いていた観衆が、どんどんステージ前に詰めかけてきた。

 国民的大ヒット曲「モンロー・ウォーク」「スローなブギにしてくれ」を歌うと、会場のボルテージは最高潮に達し、カーニバルのような盛り上がりに。

南佳孝さんが歌うと会場がまるでブラジルの海岸のよう

 そのままフィナーレを迎え、出演者全員がステージ上に集合。観客も全員で合唱できるようにと、「上を向いて歩こう」が演奏され、大合唱で幕を閉じた。主催側は、約3,000人の来場数だったと発表した。

大団円のフィナーレ

まさに「PEACEFUL EASY FEELING」(photo by橋本おさむ)

初回から参加のブレバタと南佳孝さんも大満足

 オーガナイザーの安部次郎さんは「ヘッドランドビーチは、普段でも土日は家族や友達が集まって楽しめる場所です。まったりと週末を楽しめる平和な場所。それゆえ『peacful easy feeling』なるタイトルとなっています。フリーコンサートなので、特に定期的に開催されているわけではなく、様々な条件が揃ったときに開催しています。特にスローガンもある訳でもなく、メロウな音楽を家族や友人と一日、楽しく過ごせればいいかなと思っています」と述べた。

思い思いの楽しみ方がここにある(photo by橋本おさむ)

 宮治さんは「茅ケ崎らしいゆるさが良かったですね。これが、まさに茅ケ崎の人たちの楽しみ方ですね」と、茅ケ崎タイムの過ごし方に幸せを感じていた。

「茅ケ崎の顔」である宮治さん(右)

 イギリス出身で茅ケ崎在住のMorgan Paulさんは「まさに茅ケ崎!私は広島に住んだことがあるが、広島と茅ケ崎は全く違う。茅ケ崎は雰囲気がハワイと似ていて、みんなリラックスしているね」と、嬉しそうに話した。

茅ケ崎での交流を楽しんだ(photo by橋本おさむ)

 2002年の初開催から、中心人物として尽力してきたブレバタの幸矢さんは「天気も良かったし、雲一つない最高の場所で海を見ながら、自由な感じがとても良かったです。1960年代にアメリカで流行ったフリーコンサートを思い出し、懐かしさと楽しさがいっぱいでした」と。二弓さんは「快晴で風も涼しく、美味しいビールをいただき最高のライブができて、ありがとうございました!!」と、それぞれコメントを寄せた。

二弓さんのナチュラルな生き様に憧れる人も多い(photo by橋本おさむ)

 毎回、トリを務めて場を締めてきた南佳孝さんも「楽しいライブでした。天気にも恵まれ、何十年も前から知っている友人たちとビーチに集い歌うライブは、忘れていたものを思い出し、次に続くフォロワーを生み出していくのかも知れません」と結んだ。

歌に誘われてステージ裏にも人垣が(photo by橋本おさむ)

 昨年の開催予定タイトルにも掲げていたマウイ島復興支援「PRAY FOR MAUI」は今年に引き継がれ、会場には義援金の募金箱が設置された。この募金箱は、1月1日に起きた能登半島震災の募金も併せている。合計約10万円が集まり、マウイ島と能登半島の義援金として、半分ずつ被災地に送られる。

たくさんの観客が募金に協力した(photo by橋本おさむ)

 主催側はゴミの持ち帰りの協力を呼びかけた結果、これほどの観客が溢れかえったにも関わらず、ゴミのポイ捨ては見受けられなかった。海水浴や花火など他県からの観光客が増えるイベントでは大量のポイ捨てが発生するが、地元中心のイベントでは、それぞれが分別した行動をしてビーチをきれいにしようと心がけるのも、海や地元を愛してるいる人が多い街だからだろう。

地元の飲食ブースも人気(photo by橋本おさむ)

海には烏帽子岩がくっきりと見える(photo by橋本おさむ)

編集後記
2005年の開催時、南佳孝さんが「ライブというよりパーティ。 海辺でお酒飲んで 自分たちも楽しめれば」とコメントした。筆者は当時も参加していたが、20年近く経った今も、会場は当時と同じ空気と笑顔に包まれていて、全く時の流れを感じなかった。古い友人にたくさん再会し、次々と出会う人が皆、初対面なのにその場で意気投合して同じ時間を過ごすなど、これが茅ケ崎の魅力なんだなと実感したイベントだった。ぜひ来年以降も続いてほしいと願う。
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