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平塚に実在する「謎のカラクリ屋敷」を描いたノンフィクションが話題に

笑顔のミドリさんが写った書籍の表紙

笑顔のミドリさんが写った書籍の表紙

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 平塚市にある、屋根から電信柱が突き出た家と家主のミドリさんに迫るノンフィクション「ミドリさんとカラクリ屋敷」(集英社)が5月26日に刊行され、話題を集めている。

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 著者は、平塚で生まれ育ったノンフィクションライター鈴木遥さん(28)。奈良女子大学大学院では住環境学(建築学)を専攻し、京都・奈良を中心にさまざまな町並み保存活動や建築物の記録活動に携わる。大学院修了後、就職のため3年ほど都内に住んだが、「古い建物など興味の対象が圧倒的に関西の方が多い」ことから現在は大阪で暮らす。

 同書は、著者が高校生の時に偶然出合った「電信柱の突き出た家」に10数年間通い続けた記録を一冊にまとめた実話。2年越しで家主を訪ね、「その家に負けないほど謎めいた」ミドリさんに出会う。「破天荒でユーモアに富んだ」ミドリさんに魅せられた著者は、そのルーツを追うべく北海道や新潟に赴きミドリさんの足跡を訪ね、家の秘密を解き明かしていく。

 「無名の人と家だが、このまま何の記録もなく価値付けもされないまま失われていくとしたら、あまりにも惜しいと思った」と執筆の動機を話す鈴木さん。「ミドリさんに話を聞くだけでも記録としては十分に成り立つが、ミドリさんゆかりの地に足を運び、自分の目で確かめることとミドリさんとのやりとり、この両方があってこそこの家の世界観が伝わるという思いが強くあった」という。

 第8回開高健ノンフィクション賞では僅差の次点となり、佐野眞一さんや茂木健一郎さんらから評価のコメントも寄せられた同作。書籍化から1カ月で7件のイベント出演の依頼があり、湘南エリアでは平塚のラジオ局からオファーがあった。「全くの無名な著者のデビュー作にもかかわらず反響の大きさに驚いている」と鈴木さん。市内書店では、ワゴンや多面展開で販売されており、「10冊、15冊とまとめ買いをしてく人もおり、1カ月で50冊売れている」(文教堂書店平塚駅前店)、「発売前から予約があった。手に取ってページをめくるとたいていの人が購入していく」(サクラ書店)など、地元での関心も高い。

 「何事にも前向きで、明るく面白い97歳のミドリさんの生き方に共感できる部分も多いと思う。湘南に住む方たちにこそ、身近な場所の人や物語としてぜひ読んでほしい」と鈴木さん。ミドリさんの読後の最初の感想は「その通りのことが書いてある」で、表紙の自分の顔を「美人だ」と絶賛しているという。

 体裁は、単行本(ソフトカバー)全292ページ。価格は1,575円。

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