鎌倉の出版社・港の人(鎌倉市由比ガ浜3)は2月4日、鎌倉市内にある個性的な22のパン店を紹介した「かまくらパン」を出版した。
働く人の思いやこだわりなどを、店舗の写真と代表的なパンと共に紹介。読み応え、見応えある一冊に
鎌倉は古くから地元で愛されているパン店も多いが、新たな店が続々とオープンしている。その中から地元出版社ならではの目線で選び、情報誌などとは異なる切り口でアプローチした。
編集と執筆も担当した同社の井上有紀さんは「1年ほど前に企画しリサーチを重ね、昨秋から取材を始めた。地元に密着した店の背景にあるストーリーや思いまでを伝えたかった」と話す。
市内常盤にある「kamakura 24sekki」のオーナーは食生活を変えることで健康を回復した体験から、麹の酵母や北海道産小麦、自然農法の食材など安全で体にやさしいパンを焼いている。その味に感動し涙を流した客がおり、「昔からの天然のものには強い生命力がある」と自らも感動したエピソードなども伝える。
極楽寺の「Boulangerie bebe(ブーランジェリー ベベ)」、北鎌倉の「にちりん製パン」、長谷の「Bread Code by recette(ブレッドコード)」、材木座の「mamane」、由比ガ浜の「みゆきぱん」、大町の「日進堂」、「米町マフィンズ」、浄明寺の「れのかまくら」など個性豊かな店を代表的なパンと共に全てカラーで掲載した。
同書では「鎌倉とパンと私」というタイトルで沼田元氣さんのエッセー、澁澤龍子さんといがらしろみさんのインタビュー記事も掲載。詩人や歌人のパンにまつわる作品も紹介し、さまざまな角度からパンに迫る。パン店巡りのガイドブックとしても使えるよう巻末に「鎌倉パンMAP」も付けた。
同社は1997年に鎌倉で創業した出版社で、文芸書や学術書がメーン。社名は、親交のあった詩人・北村太郎さんの詩から命名した。同書は初めてのジャンルの刊行物だという。
井上さんは「地元の出版社としてやるからには読者はもとより、パン店にも、当社のファンにも喜んでいただきたいので、いい加減な仕事はできないとの思いで取り組んだ」と話し、「地元に良い店があることはかけがえのない財産。コツコツと頑張っている小さな店、誰もが安心して通える店をこの本で知っていただき足を運んでほしい」と呼び掛ける。
仕様はオールカラー80ページ。価格は1,200円(税別)。鎌倉市内をはじめ全国の書店で扱う。