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鵠沼でエシカルサーフイベント 有名アスリートも多数参加

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海岸隣接の公園で100以上のエシカル店舗が出展

鵠沼でエシカルサーフイベント 有名アスリートも多数参加

 11月3、4日に神奈川県立湘南海岸公園サーフビレッジ(藤沢市鵠沼海岸1)で、国内最大規模サーフフェスでエシカルイベントの「カーニバル湘南」が開催された。主催は国際環境NGOサーフライダー・ファウンデーション・ジャパン(以下、SFJ)。このイベントの前身は、戦前から30年近く続いた「鎌倉カーニバル」ゴミが出ないイベントの気持ちよさや、ワクワクする街づくりをみんなで考えるイベントとして誕生し、今年で3回目を迎えた。昨年までは辻堂海浜公園で開催されたが、今回は海を臨む新会場のサーフビレッジに移った。今年は江ノ島電鉄が協力し、江ノ島で開催された「湘南キャンドル」と茅ケ崎里山公園で開催されたフリーイベント「Harvest Park」の会場をシャトルバスやシェアサイクルで繋ぎ、それぞれの会場を行き来しやすいように整備された。

サーファーが通りすがりに立ち寄る光景は、湘南ならでは

 開催にあたり、藤沢市議会議員でもある佐賀和樹実行委員長は「"SURF90からSURF2050VISIONへ"と目標を掲げて、ゴミゼロのイベントを地元のみなさんと作り上げていきたい。夜はシークレット花火も打ち上げるので、最後まで楽しんでほしい」と挨拶を述べた。「来場者もゴミゼロを当たり前に」をスローガンに掲げたこのイベントでは、会場内にゴミ箱を設置していない。来場者には、飲食の際に使用するカトラリー等の持参を呼びかけ、ローカルマルシェのフード提供は、来場者が持参した食器類での提供等、出店者及び来場者の双方の協力のもと、「ゴミゼロ」イベントの実現を目指している。また、音響機器の電源はソーラー発電機を使用する等の環境配慮を行い、タンブラーやお皿、カトラリー等の販売も行った。

湘南、横浜、横須賀などから話題の店舗が出展

香ばしい匂いに来場者は目移り

大人気のドーナツ屋は、揚げ上がり時間ごとに長蛇の列が
 また、スマートフォンアプリを用いて、会場内でマイカトラリーやエコバッグ持参で飲食物を購入したときや、ワークショップ参加などでポイントが貯まるスタンプラリーを実施。貯まったポイントに応じて、イベントロゴステッカーや地域の対象店舗で使用できるクーポン券、オリジナルグッズなどのプレゼント交換のほか、プロサーファー使用済サーフボードやポートレート撮影会参加券などの豪華特典が用意された。

先着100名に配布されたロゴステッカーは、販売もされた人気アイテム
 会場内は大きくエリア分けされており、海が見える芝生広場では、ヨガ、プロサーファー達が企画したスワップミートやワークショップ、100店舗を超えるマルシェ、古着屋、フードトラックなど、湘南で話題の店舗が軒を連ねた。特に、子どもたちに楽しんでもらいながら環境に対する意識を持ってもらうワークショップの出展が多く見受けられた。さらに、子どもたちを対象としたゴミコンシェルジュを事前に募り、当日参加した子供たちは専用ビブスを身につけて会場内をゴミ拾いしながら、元気にゴミの持ち帰りとマイカトラリー持参や日々のゴミ分別を啓発した。今年から同イベントは環境省の後援を受けることになり、浅尾慶一郎環境大臣も会場視察に訪れた。

ゴミコンシェルジュが元気いっぱいに会場内を練り歩いて啓蒙活動

ヨガは朝9時から講師が入れ替わりながら、終日開催された


お得に楽しみながらリサイクルに参加

 子どもたちが楽しみながらお絵描きや工作を行うワークショップが随所に出展。遊びながら、エコや美しい環境を守る大切さを学んだ。親子参加だけでなく、子どもたちはその場で仲良くなって、一緒に絵を書いたり工作をしたりして楽しんだ。

壁いっぱいに大きな海を用意し、自由に魚を描いていく

サーフボードにペイントするコーナーも大人気


ワークショップを通して海洋プラスチック問題を学ぶ

キャンパスに刺繍をする体験は、老若男女が真剣に挑戦


サーフアートは大人にも人気

 オープンエアシネマスクリーンを中央に据えたエシカルマーケットでも、円を描くようにさまざまな飲食店、ボタニカル、染め物、マッサージ、ミニライブステージなど、湘南という土地柄を反映した多彩な出展が並び、来場者はあちこちを回って楽しんだ。

草木染めの販売やワークショップは、多くの興味をひいていた

瑞々しい野菜や果物が並ぶ、オーガニックフード販売

ボディケアにはファミリーが続々来店

アート作品のようにおしゃれなボタニカル


世界的アスリートやレジェンドサーファーの登壇に沸き立つ

 芝生エリアのメインステージでは、湘南在住の中高生6人が未来への環境の取り組みを考える「未来も海と暮らすため~中高生が感じる環境問題~」、高齢化や後継者不足、耕作放棄地なども問題を考える「農業トーク」、さまざまな団体がトークセンションで意見交換する「環境団体が見つめるビジョンは」、サーフィンとSUPそれぞれの若手インストラクターたちが現状で課題となっている海洋問題を語る「次の海業界を担う若手インストラクター達」が行われた。日本のサーフィン文化を支えたレジェンドサーファーである関野聡さんと久我孝男さんのスペシャル対談では、ステージ前にぎっしりと観衆が押し寄せて、全盛期の話しを食い入るように聞いていた。

サーフィン文化を広めたレジェンドのトークは、サーフィンの歴史そのもの

 海洋ごみ問題や気候変動の原因のひとつである使い捨てプラスチックごみをなくしていくために、スポーツ界からプラスチックの使い捨て削減に取り組む日本財団プロジェクト「HEROs PLEDGE」の一環として、多くのトップアスリートが登壇。スポーツイベントで大量発生するゴミ問題への取り組みや、ケータリングのゴミなど、アスリート目線での報告がされて、観客の関心を寄せた。

豪華なトップアスリートらの登場で会場が盛り上がった

 アトランタ五輪競泳日本代表の井本直歩子さんがファシリテーターを務め、初日は「スポーツ界からプラごみをなくそう」というテーマで、ラグビー元日本代表・五郎丸歩さんと、バルセロナ五輪競泳金メダリスト・岩崎恭子さんが登壇。世界を転戦してきたアスリートの目線から感じた世界の大会運営や街なかでの環境問題への取り組みと、日本での現状を伝え、自分自身が日常で家族などと行なっている環境保護やエコ活動を紹介した。また、試合会場でのゴミゼロを目指し、日常でも環境問題に取り組み、自分たちが率先して世の中に発信する役割の重要性を語った。あまり聞く機会がない、オリンピックやワールドカップの裏側にある環境問題に触れる貴重なステージとなった。

トップアスリートたちが環境問題のために団結

 2日目は「気候変動、環境について」をテーマに、マラソンのレジェンド・谷川真理さん、リオデジャネイロ五輪バドミントン女子日本代表でベスト8入りを果たした栗原文音さんが登壇。子どもや高齢者などそれぞれの立場で、日常で気軽にできるエコ活動を指南。また、それぞれのスポーツを気軽に楽しむコツを会場からリクエストされたときに、谷川真理さんはジョギングで疲れにくく足を痛めない走り方を教え、会場が盛り上がった。ステージ後もたくさんの観客が行列をなして、アスリートと会話や写真撮影ができて喜んでいた。


腕の振り方、足の着地の仕方など説明する谷川真理さん(中央)

 ステージではライブ演奏も行われ、元JPSAロングボードグランドチャンピオンである鵠沼出身の河村正美さんが、夕刻の鵠沼海岸に似合う優しくピースフルな演奏をした。歌手のC.C.さんは、メインステージとエシカルマーケットで、カーニバル湘南のテーマ曲「マイ箸」や、湘南をテーマにしたあたたかい歌を披露した。

C.C.さんの歌は、地消地産 に囲まれた会場に溶け込んでいた

 

海洋環境問題シンポジウムからサーフムービーまで多彩なプログラム

 多目的ホールでは、日本サーフィン連盟理事も務めるプロサーファーの大村奈央さんが、初日に「豊かな海を守るために~消えゆく海藻を守る~」では葉山の海漁師・アキラさんと、相模湾の海藻がここ10年のうちに90%以上消失した現実の報告と生物多様性の重要さをディスカッションした。2日目は、「美しき砂浜を守るために~海岸侵食を止める~」として、日本、アジア、南米、ハワイなどの海岸侵食の現状、温暖化などの問題点、珊瑚保全活動などを報告。サーフブランドのROXYバックアップによる契約女性サーファー仲間たちとの世界のサスティナブルリサーチ活動「3 RIDING OCENE」を行なっており、極端な大潮である”KING TIDE”による海岸侵食被害報告動画を公開して解説した。

動画やスライドを通して「珊瑚はなぜ必要なのか?」を語る大村奈央さん
 また、同席した日本ブルーフラッグ協会・片山清宏代表理事も、海岸侵食や気温上昇で野外へ出かける割合が減少していることや監視員予算確保の厳しさなどによる全国の海水浴場数の減少と、今後の海水浴場環境保全や安全管理などによるブルーフラッグ認証海水浴場の増加に務める状況を説明。ファシリテーターを務める近藤大輔SFJ理事が、神奈川県議会議員の立場から神奈川県市町村ごとの海洋管渠保全や海水浴場存続への取り組みを伝えた。その他、同会場では社会学者を招いて湘南各市の市会議員が話し合う「海を愛する政治家フォーラム」も開催された。

ブルーフラッグの説明をする片山清宏代表理事(左)
 このホールでは、エシカルスタンプ特典で先着プレゼント交換した5名に、横山泰介さんによるポートレイト撮影会も開催された。横山さんは鎌倉育ちで、自身もサーフィンもしながら数多くのビーチカルチャーを取り続けてきた人気フォトグラファー。また、彼が撮ってきた著名人はケリー・スレーターさんやジャック・マイヨールさんなど海のレジェンドのみならず、桑田佳祐さんや槇原敬之さん、山口智子さんや多くのハリウッドスターなど多彩な顔ぶれで、それらのポートレイトがずらりと廊下に貼り出されていた。メインステージで行われたサーフレジェンド対談を客席で観覧していた横山さんは、若い頃から時代をともに過ごしたレジェンドたちに呼ばれて登壇し、思い出を語った。

数多くのサーファー、ミュージシャン、ハリウッドスターらのポートレイトが並ぶ

サーフレジェンド対談では、ステージに呼ばれて昔の思い出を語った
 特設会場では湘南ベルマーレ協力の元、キッズサッカー教室が開催。ビーチにはビーチバレーコートが設置され、来場者は自由に楽しんだ。

特設ビーチバレーコートが無料解放された

 夕刻には「横乗日本映画祭」とコラボした映画を上映。メイン上映となる、サーフィン映画の代表的存在「MANY CLASSIC MOMENTS」目当てに、多くの人が集まった。剱持良輔実行委員長は、今年は四国と茅ヶ崎で上映会を行なってきた感想とともにここで開催を迎えることで、スポーツと音楽とアートなど五感を刺激する発信を続けることと、自然を大事にする気づきの一端として参加できた喜びを語った。また、と同時上映した、鵠沼の顔ともいえるレジェンドサーファーだった故・大野薫さんのドキュメンタリー映画「Daze」と大野さんへの思いを語った。

スクリーン前では茅ヶ崎のクラフトビールが販売

たくさんのグループが、マルシェの飲食物を手にして集まった

会場で販売された、記念Tシャツ 映画が終映したときは、会場は真っ暗で肌寒かったが、多くの来場者が最後まで残って楽しんだ。このイベントは、来年以降も日本初のゴミゼロとマイバッグやカトラリー持参来場100%イベント開催を目指して続けられる。

寄り添ってブランケットをわけあう姿が、このイベントを象徴していた

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