

↑この真ん中の部分でよく演奏されている
一日の終わり、街頭の光が目立ってくる。藤沢駅の北口から出てすぐ、空中デッキに突き出た高木を囲むようにベンチがあり、その少しのくぼんだスペースからなにか音楽が奏でられていく。立ち並ぶ雑居ビルにこだまするその音が行き交う人々を包み込み、薄暗い帰り道に少しの彩りを加える。
そんな日常のささいな一コマが、僕はとても好きだ。
…少しかしこまって書きすぎたかもしれないが、この気持ちは本当だ。僕はあの空間がとても好きだ。普段何気なく素通りしている人も多いだろうし、それこそ他の雑音と同じ様に聞き流す人がほとんどなのだと思う。しかし僕はこれでも音楽をやる側の人間だから、音楽をやっている人にはどうも親近感を覚える。それもあんな人通りの多い場所で、音楽を街中に響かせている彼らをとても尊敬している。実際自分だったらあんなことできないと思う。
それはもちろんスキル不足による自信のなさもあるのかもしれないが、仮にその自信があったとしても人通りの多い場所で素通りしていく人々を前に演奏をするというのはなかなかできることではないだろう。
そんな中でも信念を持ってか、立ち止まらせるほどの技量を磨くための訓練なのか、どんな理由であれ街の中で自分をさらけ出して表現をするという事自体、今の自分では到底無理だろうし、あんなふうにできたらなぁと思うばかりだ。
聞く側になってみて改めて思う。皆、素通りしているようで、それなりに耳をかたむけているのではないか。目の前に立ち止まって聞く人はいないようだが、行き交う学生やベンチや芝生に座り込む人たちなど、僕のように近くで座り込んで聞き入っている人は一定数いるのではないだろうか。もちろんそれなりに人気があり、周りで聞いてくれるファンなどがいる人は別だが、そうではない奏者にもやはり、その音楽が届いている人はいるのだろう。
そんな藤沢のストリートミュージシャンたちにも様々な人がいる。この前見てびっくりしたのはVtuberがプロジェクターを用いてネット上の弾き語り配信を映し出していたときだ。自立式のスクリーンを立てて、おそらくスタッフであろう人たちが周りでせかせかと準備をしていた。最初は藤沢市公式の広報活動かなにかかと思っていたのだけど、調べてみるとVtuberの路上ライブ活動を支援する団体みたいなものがあるようで、彼女は「星月ねむ」というおそらく個人の活動者なのだった。画面上のみの二次元的な活動が、三次元のリアルに干渉してくるというなんとも不思議な路上ライブだったが、こんな身近に近未来が潜んでいることを発見して僕は少しワクワクした。
また、他に印象に残っているのは伊地知さんがいるバンドに出会ったときだ。伊地知さんは「ASIAN KANG-FU GENERATION」もとい「アジカン」と呼ばれるというバンドのドラマーで、話題になったぼっちざろっくというアニメのキャラクターの苗字の元になったのがそのバンドである。
最初に出会ったのは一年前、まだ軽音部に入りたてで、バンド音楽に疎かったのだが、先輩が生粋のアジカン好きということもあって僕やバンドメンバーもアジカンに少し興味を持ち出した頃、その場所で聴衆を多く集めていたバンドの中にアジカンのメンバーが居るらしいと言われたのが最初の出会いだった。
そもそもバンドに疎かったのもあり、最初はアジカンの偉大さをわかっておらず「聞いたことあるバンドのメンバーが居るなんてすごい」くらいだったのだが、今となっては僕もアジカンをめちゃくちゃ聞くようになり、改めてそのすごさを実感している。
もちろん、アジカンのメンバーが居るという話題性もあるが、現在やっている「Name the Night」というバンドの音楽もそこで出会って以来、Spotifyのプレイリストに入れるくらいには好きになって、今では愛聴している。(ちなみにTill Dawnが一番好き)名前の通り夜に合うイマドキでオシャレな曲が多く、そういう曲が好きな人は是非一度聞いてみてほしい。
あの一角だけでも多様な音楽があり、表現があり、活動があるのだ。他にも紹介していないだけで、おそらく何かの事務所か、スクールに所属している活動者たちが入れ替わり歌うイベントや、南口からOPAにつながる通路の端でいつも笛を吹いているおじさん。その下の小田急の出入り口で三味線を弾く人。そういった様々な音楽に藤沢駅は囲まれている。
こういった環境に置かれていると、必然的に多くの音楽との出会いが発生する。それはそのまま過ぎ去る出会いかもしれないし、胸に残る出会いになるかもしれない。僕はそういった胸に残る出会いを求めて路上ライブに耳を傾けているのだろう。普段は聞き流してしまう路上ライブの音楽かもしれないが、みなさんも気が向いたら立ち止まって聞いてみるのもいいと思う。
”次回はさるべきにやさんのコラムをお届けする予定です。お楽しみに。”
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