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サザンオールスターズ茅ヶ崎ライブ 湘南祭など市民一体で盛り上げ

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ライブ会場と全国ビューイング上映館が熱狂に包まれた

 9月27、28日と9月30、10月1日の4日間に渡り、サザンオールスターズが茅ヶ崎市民球場(茅ケ崎市中海岸3)で、10年ぶり3度目の凱旋(がいせん)ライブ「茅ヶ崎ライブ2023」を開催した。

 4日間で7万人以上を動員したライブは「C調言葉に御用心」で幕を開け、「夏をあきらめて」「いとしのエリー」「栞のテーマ」などの懐かしい曲から、新曲「歌えニッポンの空」「盆ギリ恋歌」などオールタイムベストの選曲で繰り広げられ、デビュー曲「勝手にシンドバッド」で大団円となった。

 「盆ギリ恋歌」のミュージックビデオは遊行寺(藤沢市西富1)でも極秘撮影され、茅ヶ崎ライブに参加した全国のファンが立ち寄っていた。

エリア内にあるメンバーのサインフラッグは一番人気の撮影スポット 

 9月30、10月1日の2日間のみ、全国230館以上の映画館で生中継のライブビューイングが開催され、27万人以上が鑑賞した。

ライブ当日は映画館もサザン一色 

 現在は埼玉県在住の柳沢光華さんは、桑田圭佑さんと同じ茅ヶ崎市立第一中学校卒業。「ひとりで見に来たが、周りの人がみんな仲良くしてくれて、最後まで楽しめた。サザンファンはみなさん温かい」と喜んでいた。

大満足の柳沢光華さん(左)どの上映会場も茅ヶ崎ライブのTシャツが埋め尽くした 

全国のファンが湘南の聖地巡礼に

 サザンの歌詞には、江ノ島、江ノ島電鉄(江ノ電)、七里ケ浜など湘南の風景が数多く登場する。桑田さんの母校である鎌倉学園高校や、桑田さんが初監督した映画「稲村ジェーン」のロケ地である稲村ケ崎周辺などを含めた湘南じゅうを、ファンが聖地巡礼で周って楽しんでいた。

 JR茅ケ崎駅ホームの発車メロディに使用されている「希望の轍」が流れるたびに、ファンがスマートフォンで録音をしていた姿もあった。また、JR東日本がライブ開催の4日間限定で東京~茅ケ崎間を運行した臨時特急「えぼし」も話題となった。

江ノ電で江ノ島や鎌倉など巡った人も多かった 

 愛媛県在住の酒井研治さんご夫婦は、初日に参加。「ローカルの人たちはみんな気取らず、でもさりげなくおしゃれで素敵な街。サザン抜きでもこの街に惚れた」と話す

「月明かりに浮かぶ烏帽子岩に感動した」と酒井さん 

 愛知県から初参加の柘植陽子さんは「地域のボランティアの方々の案内などご協力がひしひしと伝わった。ひとりだったので、近くにいたファンのグループのみなさんがサザンビーチまでご一緒しましょうと声をかけてくれて楽しく過ごせた」と、感謝でいっぱいの旅行になった。

サザンビーチのモニュメントは常に撮影の順番待ちが 

 福岡県からご夫婦で参加した西智子さんは「この45年間、辛いときも嬉しいときも私の横にはずっとサザンがいた。今夜は最高の日となった」と語った。

二人三脚で困難を乗り越えて参加 

 埼玉県在住の鈴木恵美さんは、茅ケ崎市内で海鮮や和菓子を堪能したとき「お店の方はライブチケットが手に入らなかったらしく、それでも親切にしていただいて『楽しんできてくださいね』と言ってくださった。浜降祭を地元の方が教えてくださるなど、みなさん親切で楽しませてもらえた」と地元の人の優しさに感謝していた。

茅ケ崎市民のおもてなしに感動した鈴木さん(左) 

 都内在住の矢島陽子さんは家族三人で参加。小さなお子さんを連れているので「娘は夫婦で抱っこしたり膝の上に座らせていたので心配だったが、花火や烏帽子ライト(光るリストバンド)などの演出や、放水の掛け声などを楽しんでいたので安心した」と、存分に楽しんだそう。

初参加のお子さんも大喜び

 がんの治療中の人に何人も出会ったが、みなさんサザンを通して家族の絆を深めたり、サザンで出会った友人に励まされたと感謝の気持ちを語っていた。

 茅ケ崎市在住の増田理恵さんも乳がんの治療中。「私も桑田さんと同じがんサバイバー。桑田さんみたいに元気になります」と笑顔で友人たちと過ごした。

サザン友だちと笑顔で再会した増田さん(中央)

サザンビーチでは湘南祭が臨時開催

 今回は近隣住民への配慮で、球場周辺はチケット確認による入場制限を行い、音漏れや写真撮影などの人混み対策を行なった。その分、隣接するサザンビーチには全国から来たファンが集まり、あちこちで手作り衣装やグッズなどを見せ合い、盛り上がっていた。

45周年公式ロゴを施したネイルアート 

 前回の茅ヶ崎ライブで桑田さんが来ていた衣装のデザインを自作して着用してきた兼近俊哉さん。「歌詞と重なる潮風や空の下で味わえる特別感はここにしかない宝物。このご褒美のために、日々頑張って生きている」と、仲間たちと喜びを分かち合っていた。

前回衣装の自作レプリカを着た兼近さん(後列中央) 

 ライブ開催に合わせて、茅ケ崎市内各所やビーチでライブの来場者や観光客を迎える企画が行われた。茅ケ崎駅の改札を出ると、目の前のコンビニエンスストアでは9月27日に全国発売されたが即日完売した、日刊スポーツ特別編集「サザンオールスターズ45周年特集業」が山積みで売られていた。

改札口からすでに「茅ケ崎に着いた」と実感 

 駅ビルの「ラスカ茅ヶ崎」入り口では、烏帽子岩やサザンビーチのイラストをあしらった「茅ヶ崎グッズ」の特設販売コーナーが設けられ、行列ができていた。

聖地·茅ケ崎のご当地グッズはお土産としても人気 

 茅ケ崎駅前の「長谷川楽器店」では、駅に常設されたコインロッカーが少ないことを茅ヶ崎市観光協会などが懸念していることから、茅ヶ崎市商工会議所のサポートをいただきつつ、クロークサービス(1個につき1,000円、LIVE開催日の各日10~22時預かり、事前予約不要)の告知を行い運営したところ、合計50個ほどの利用があった。

 担当者の長谷川さんは「遠方からお越しの方や、平日の仕事終わりに直接いらっしゃる方は大変喜んでいただけた。また、聖地巡礼をしたいという方などとお話しができて、全国の方と繋がりが持てた」と話す。

店頭いっぱいのウェルカムボードでお出迎え

 9月30、10月1日には、毎年5月に開催している湘南祭が「ここが故郷·茅ヶ崎の『おもてなし2023』By湘南祭」として臨時開催された。サザンビーチには約40店の飲食物販店が並び、地元住民とサザンファンを中心に賑わった。

憧れた景色を眺めながら食べる地元メシは格別

 ウェルカムステージでは「音C魂-おとしだま」がオーガナイズ協力して多種多様なパフォーマンスが繰り広げられた。「Musicコミュニティ音C魂」代表のモリタ直美さんは「音楽の街·茅ケ崎らしい地元ミュージシャンによる極上のエンターテイメントでおもてなしをすること」を来場者に届けられた感謝を込めて「音楽の街へまた来てね」とメッセージを送った。

スタッフたちのおもてなしの心が来場者に届いた 

 茅ケ崎のシンボルである烏帽子岩を臨むビーチでの開催に来場者は「こんなに気持ちいいステージは日本中探しても他にはない」と喜んでいた。

相模湾を一望した絶景のイベント会場 

 過去2回開催された茅ヶ崎ライブを超える人出が予想されたため、茅ケ崎市は「茅ヶ崎よりどころ」という企画を立ち上げた。

 茅ケ崎駅からライブ会場となる会場までの導線における仮設トイレ、ゴミ捨て場、地元物産展などの設置とクリーンアップ、全体のおもてなしに注力するという趣旨で、遠方から参加したファンや、入場するまでに時間がかかっているときにとても喜ばれた。また、ビーチでもゴミ拾いがボランティアによって行われた。

人出とともにボランティアも大活躍した 

市民待望の茅ヶ崎FMが開局

 10月1日には、茅ケ崎市初となるコミュニティFMの茅ヶ崎FMが開局。ライブ開催に合わせて9月27日から試験放送が行われ、ビーチでもファンがサザンの曲に酔いしれていた。

 茅ヶ崎FMのスタジオが設置された茅ヶ崎市役所前広場には、ライブ開催と連動した記念イベントをライブ開催期間中に、大々的に開催。会場には茅ヶ崎FMグッズ、地元企業、茅ヶ崎ライブ公式グッズなどの店舗が出店して、連日早朝から大行列ができていた。

残暑のなかでも行列が途絶えなかった 

 茅ヶ崎FMグッズのブースには、烏帽子岩をモチーフにしたステーションロゴマークを担当した、茅ケ崎出身のファインアーティストであるRYU AMBEさんのイラストをあしらったグッズが並び、「かわいい」「おしゃれ」と評判だった。

飛ぶように売れた茅ヶ崎FMオフィシャルグッズ 

スタッフが茅ヶ崎FM特製うちわとステッカーを配布

 隣のブースでは、茅ケ崎を代表するアイスクリーム店「Plenty’s(プレンティーズ)」が、人気フレイバーのアイスクリームやコーヒーを販売。真夏のような残暑のなか、アイスクリームを求める客足が途絶えなかった。

 また、昨年7月に閉店した桑田佳祐さんゆかりの老舗「清月」で看板メニューだった「サザン佳祐ドッグ」を茅ヶ崎FMによってリニューアルした「佳祐スペシャルドッグ」(税込500円)を販売した。これは、清月店主の高橋ツナ子さんが心を込めて手作りし、茅ケ崎市民に愛されてきたレシピをご提供くださり、スタッフが改良を重ねて完成させたもの。今後は11月にオープンするスタジオ横の「茅ヶ崎カフェ」で提供予定。

各日、午前中で完売した「圭佑スペシャルドッグ」 

 圭佑スペシャルドッグを嬉しそうに購入された国吉(くによし)さんは沖縄から。「前回開催に続いて昨夜が2度目の参加。体力のある限りライブに行きたい」とサザン愛を語った。

「10年ぶりに食べる」と嬉しそうな国吉さん 

 Plenty’sの長谷川裕社長は「この45年間の活躍で、どれだけ茅ケ崎の街が賑わい、市民の心を支えてきたか。感謝しかない。さらに待望の茅ヶ崎FMが誕生して、全国に茅ケ崎の情報を届けてもらえることを期待している」と語った。

笑顔で終日接客していた長谷川さん 

 茅ヶ崎FMスタジオ前では、開局記念セレモニーのテープカットののち、午前10時から本放送が開始された。

左から茅ヶ崎市観光協会事務局長·茅ヶ崎エフエム取締役の新谷雅之さん、音楽評論家·茅ヶ崎エフエムDJの宮治淳一さん、アミューズ代表取締役社長·茅ヶ崎エフエム代表取締役社長の中西正樹さん、茅ヶ崎エフエムDJの政井マヤさん、茅ヶ崎市商店会連合会 会長·茅ヶ崎エフエム取締役の長谷川裕さん 

 茅ヶ崎FMのジングルに続き、記念すべき第一声は桑田佳祐さん。「みなさん、おはようございます。茅ケ崎生まれ茅ケ崎育ちの桑田佳祐です。本日ここに、愛すべきふるさとマイリトルホームタウンに、茅ヶ崎FMがめでたく開局いたしました」と事前録音による開局アナウンスを告げ、「それでは参ります。記念すべき茅ヶ崎FMの1曲目は、加山雄三さんの『君といつまでも』」と曲紹介を行なった。

いよいよ本放送が開始された 

 この日、22時まで行われた放送のメインパーソナリティーを務めたのは、茅ヶ崎FM設立のきっかけをつくり、尽力された音楽評論家の宮治淳一さん。元フジテレビアナウンサーの政井マヤさんと試験放送からタッグを組んで開局を迎えた。

絶え間なくサザンファンがスタジオ見物に訪れていた 

 宮治さんは桑田さんとは小·中学校の同級生。サザンオールスターズと命名した人物としてファンの間でも知られている。試験放送開始時から、スタジオ内を覗ける窓の前には多くの人垣ができていた。

左から宮治さん、政井さん 

 スタジオ横には、RYU AMBEさんのイラストが大きく描かれたサインフラッグが掲げられ、記念写真の列ができていた。

 茅ケ崎在住の山本さんは、父娘でご来場。まだ茅ヶ崎ライブは見たことがなく、「今回はビーチに行って、球場から流れてくる音をゆっくり楽しんだ。湘南祭も臨時開催されて面白かった」と答えた。

「娘は生まれたときからサザンファン」と山本さん 

茅ヶ崎エフエム代表の中西正樹さんインタビュー

 アミューズと茅ヶ崎エフエムの代表取締役社長を兼任している、中西正樹さんに話を聞いた。

——開局のきっかけは?

 「アミューズに入社以来、茅ケ崎に四半世紀お世話になって、何か恩返しができないかと思っていた。湘南エリアにたくさんのコミュニティFMがあるのに、なぜ湘南サウンド発祥の地でもある茅ケ崎にはFM局がないのかという声を多く聞いていた」

——2011(平成23)年の東日本震災でラジオの重要性が再確認されたのも転機となった?

 「あのとき、東日本各地が大停電となってご家族やご友人の連絡が取れなくなってご心配されたり、避難所生活された方も多いなか、各地域のコミュニティFMが地元の被害状況を逐一伝えていた」

悲願達成して開局の日を迎えた

 「震災後に桑田佳祐とともに何度も足繁く被災地に通い、現地のコミュニティFMの方々と情報交換もしてきた。茅ヶ崎も海に隣接している場所なので、やはりライフラインとしてFM局は必要不可欠と感じた。サザンオールスターズが45周年を迎えるこの機会に立ち上げなければ、という思いで動いてきた」

——今は全国でもコミュニティラジオが聞ける時代に

 「確かに今は、サイマル配信によって手軽にスマホやネットでコミュニティFM放送が聞けて、この茅ヶ崎FMも公式ホームページから聞けるようになっている」

茅ヶ崎市民の思いを電波に乗せて放送開始

 「また、朝からDJをしていただいている宮治淳一さんが企画と主演をされた映画『茅ヶ崎物語~MY LITTLE HOMETOWN~』で茅ケ崎の歴史や文化を広く伝えたり、茅ケ崎市職員は夏服としてアロハシャツを採用していることも全国ニュースで話題になったりと、茅ケ崎市の風土や魅力が全国発信されている。今後、茅ケ崎のみなさんと協力して地域情報や防災情報と合わせて、古(いにしえ)のものをしっかり守って次世代に継承しながら街の歴史を重ねていく姿を日本中に発信する全国モデルのコミュニティFM局になれればいいと願っている」

全国から開局を聞きつけて集まった 

ライブ終了時の花火が茅ケ崎の夜空を彩った 

編集後記

 全国の人が茅ケ崎や藤沢などの景色、歴史、地の物、人柄に触れて感動していた。湘南サウンド発祥の地である茅ヶ崎にようやくコミュニティFMを開局できた中西さんがその光景を見て「茅ケ崎は音楽の神様に守られていると感じる」と発した言葉が心に残った。

 茅ヶ崎の魅力が音楽とともに全国に流れるなか、住民が再発見したり見つめ直す機会も増えるだろう。それが、古と未来の共存となり、新しい茅ケ崎の魅力が生まれ育つことが楽しみである。

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