「鯵(アジ)の押寿し」や駅弁製造で知られる創業110余年の老舗・大船軒(鎌倉市岡本2、TEL 0467-44-2005)は8月4日、1931(昭和6)年建造の本社ビル内に「茶のみ処 大船軒」をオープンした。
同ビルは、当時としては珍しいコンクリート造りの3階建て。1階・2階は鯵の押しずしの工場、2階は事務所として使われ、戦時中は軍に撤収されたが、戦災を免れ終戦と共に返還された歴史を持つ。
開店は、大船観音と県立フラワーセンター大船植物園の中間点に位置する同ビルに、史跡巡りやウオーキングなどで前を通った人から「建物を見学してみたい」との要望が多く寄せられたことがきっかけ。日頃あまり活用されていなかった2階ラウンジを開放し、ゆっくり一休みしてもらえる空間を提供することに決めた。
店舗面積は33平方メートル。席数は16席。改修は壁や窓などの塗装程度にとどめ、「空間の雰囲気に合うように」古道具店で調達したセカンドユースの椅子やテーブルを搬入。明かり取りの窓や神棚のほか、虫の侵入を防ぐ目的で設けられた直角に曲がる廊下「ダークルーム」など、ほぼ当時のまま残されている。
「場所柄シニアのお客さまがほとんどかと思っていたが、小さな子連れのファミリーや若いカップルの来店もある」と同社営業部長の田邊泰弘さん。
メニューは、コーヒー、紅茶(以上300円)、オレンジジュース(350円)などのドリンクのほか、隣接する工場で製造した「鯵の押寿し」(5貫600円)、焼き菓子「鎌倉カヌレ」(200円)、魚・肉・煮物をメーンに、押しずし1貫など10品近く入った日替わりランチ「料理長おまかせ弁当」(1,000円)などを提供。押しずしやそば、カヌレなどは持ち帰り用も用意する。
田邊さんは「昭和初期の面影を色濃く残す、ゆったりした空間を楽しんでほしい」と話す。「貸し切り利用では、要望に応じてメニューにない料理などのケータリングも可能」とも。
営業時間は11時~15時。