特別展「鎌倉震災史 歴史地震と大正関東地震」が10月24日、鎌倉国宝館(鎌倉市雪ノ下2)で始まった。
大正関東地震を教訓に、災害から文化財を守り後世に伝える施設として昭和3年に建てられた鎌倉国宝館。正倉院を模した高床式校倉造風建築で、国の登録有形文化財でもある
中世から近代まで鎌倉に被害を及ぼした震災の歴史を検証し近年の地震被害などを再認識するとともに、文化財保護についてもあたらめて見つめ直してもらおうと企画した。
展示では、市内をはじめ京都、奈良の寺社や博物館などの収蔵品約50点を並べる。日蓮聖人註画讃には、1257年8月27日に起きた鎌倉の大地震をはじめ、干ばつ、洪水、飢饉(ききん)、疫病などの様子が色鮮やかに描かれている。
大正関東地震の際に鎌倉在住だった画家・藤原草丘が火災や津波の跡など被害の様子を詳細に描いた鎌倉大震災図巻全6巻をはじめ、僧侶の日記、社務記録、幕末の瓦版、大正時代の写真など震災に関わる資料や実際に被害を受けた文化財も展示する。
関連イベントとして、歴史地震研究会元会長・北原糸子さんによる特別講演「地震と社会-元禄地震と関東震災を中心に-」を11月8日、鎌倉生涯学習センターホール(鎌倉市小町1)で行う。当日は江戸から大正時代にかけて地震が社会に及ぼした影響を詳しく解説する。
「大正関東地震で市内の寺社が倒壊し仏像や文化財に甚大な被害があった。こうした不時の災害から文化財を守り後世に伝えるための施設として建てられたのが鎌倉国宝館。つまり、この建物自体も今回の展示物の一つでもある」と学芸員の浪川幹夫さん。同館は1928(昭和3)年築の鉄筋コンクリート造で、2007年以降に新館と共に免震装置を設置し安全性を高めている。
「鎌倉は政権都市であり、江戸時代にも幕府直轄であったことから当時の資料が比較的多く残っている。加えて今回は大正関東地震直後の市内の写真や航空写真も用意した。目で見ることで地震や津波などの被害の状況が正しく理解できる展示になっている。時間の経過とともに関心が薄れていく中、あらためて震災について考えるきかっけになれば」と話し、「専門家による解説を聞くことで理解がより深まるはず。特別講演にもぜひ足を運んでほしい」と来館を呼び掛ける。
開館時間は9時~16時30分(入館16時まで)。入館料は500円(小中学生200円)。月曜休館。12月6日まで。特別講演は13時30分~15時(13時開場)。参加無料。事前申込不要。