鎌倉で8月23日、富士市立高校(静岡県富士市比奈)総合探求科3年生20人が夏季研修で津波を想定した避難の体験学習を行った。
3グループに分かれて避難路を進み、次の目的地である妙本寺に集まった生徒や参加者。ほとんどの生徒が初めて鎌倉を訪れたという
津波から避難する体験を通してまちづくりを考える目的で、「多様性が当たり前」の社会を目指す活動をしている鎌倉の団体「i-link-u(アイリンクユー)」が障がい者を交えた体験学習として企画運営。スタディーツアーのリディラバ(東京都文京区本郷3)が催行した。
鎌倉海浜公園由比ガ浜地区駐車場のエントランスでレクチャーを受けた後、地震が発生したと想定し3グループに分かれ、地図を頼りに出発した。各グループには視覚障がい者や車椅子利用者などが加わったり、生徒自身が車椅子に乗ったりしながら指定された津波避難ビルに向かった。
同ビルが倒壊などで入れなかったと仮定し、次の最寄りの避難地に指定されている妙本寺を目指した。障がい者と一緒に歩くことで地図上では気付かない障害物を発見したり、生徒が乗った車椅子が段差で転倒しそうになったりを繰り返しながら、各グループとも1時間前後で同寺に到着した。
会場を鎌倉婦人子供会館に移して、グループでのまとめや全体での意見交換を行った。ほとんどの生徒が鎌倉を訪れたのは初めてで「地図を見てもよく分からなかった」「地図は上から見た情報だけなので、アップダウンや電柱などは実際に歩いてみなければ分からない」「車椅子を押されての移動が怖いことが乗って初めて分かった」などと感想を発表し合った。都内から参加した障がい者も「道が狭いのは仕方がないと思うが、歩道や車道がここまでガタガタしているとは思わなかった」と話した。
同校の伊藤和彦教諭は「生徒が福祉施設を訪問した経験はあったが、障がい者と歩いたり、車椅子に乗ったり、アイマスクを付けて歩いたりしたことで、物の見方が変わったようだ。街に出て体験することの重要さがよく分かった」と振り返る。
i-link-uの高野朋也さんは「一日限定だが不自由さを体験することで街の現実を知ることができたと思う。こうした視点で自分の住んでいる街を見直し、普段から誰もがより早く避難できるよう備えてほしい。将来はこの経験をまちづくりの場面で生かしてもらえたらうれしい」と話す。