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文学館館長が問わず語り本「鎌倉文士とカマクラ」 時代越えて「再認識を」

女性もターゲットにしようと持ち歩いてもおしゃれな色とイラストの装丁に

女性もターゲットにしようと持ち歩いてもおしゃれな色とイラストの装丁に

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 銀の鈴社(鎌倉市佐助1)から昨年11月、文芸評論家で鎌倉文学館の館長でもある富岡幸一郎さんが鎌倉ゆかりの作家やその背景についてつづった単行本「鎌倉文士とカマクラ」が出版された。

トークイベントで自著について語る富岡さん。会場からはエピソードを伝えるたびにどよめきが起こった

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 同社は東京銀座で創業し2009年に鎌倉に移転した出版社で、昨年30周年を迎えた。「記念の刊行物は地元に貢献できるものにしたいと考えたのが企画のきっかけ」と話すのは同社の西野大介さん。「富岡先生は大学時代の恩師であり文学館の館長。著書も多く鎌倉でさまざまな活動にも関わっている。ところが鎌倉に特化した書籍を出されていないことに気づき、だめもとで声を掛けてみた」と続ける。

 快諾を得たものの「多忙のため書き上げるまでに時間が掛かりそうだった」ため、口述を書き起こし書籍化しようとスタートし、西野さんが同館や富岡さんの自宅に通い作業が行われた。

 「かつて教授と学生だったころのままに、まるで授業のように話してくださりとても分かりやすかったのと、実際に文字起こしをしてみると先生の雰囲気がよく伝わって来るので、あえて『問わず語り』のスタイルでいくことにした」と振り返る。

 同書は、1933(昭和8)年創刊の同人雑誌「文学界」をきっかけに多くの作家たちが集まってきたという第1章の「鎌倉文士がいた時代」から、「川端康成の『鎌倉』」「鎌倉文士と大東亜戦争」と続く。過去を振り返るだけでなく、「現代文学と『鎌倉』の魅力」の章では、藤沢周さんや大道珠貴さん、城戸朱里さんなど現代の作家も取り上げているのが特徴で、「鎌倉文士は決して、時代の文学史の中の存在ではなくて、今ここにいる」と文中でも語っている。

 富岡さんは東京生まれで、大学在学中に「群像」新人文学賞評論優秀作を受賞し文芸評論家に。1992年に鎌倉に転居、関東学院大学国際文化学部教授で、2012年から鎌倉文学館館長も務める。

 昨年12月23日にかまくら駅前蔵書室(鎌倉市小町1)で開かれたイベント「鎌倉文士とカマクラ~小人数の会だからこそ本音で語れる『ここだけの話』」で富岡さんは、本編に書き切れなかったエピソードなどを語る一方、「武士の古都鎌倉であり人気の観光地でもあるが、ゆかりの近代文学者は200人以上という貴重な場所であることを市民も行政も再認識してほしい」と訴えた。

 発売以来、取材されることも多く、市内の書店を中心に販売部数も伸びているという。

 西野さんは「この本を読んでから散策するといつもの景色が違って見え、新しい発見もあるはず。鎌倉を文学という観点からも楽しんでいただければ」と話す。

 1,500円(税別)。鎌倉市内の書店のほか全国書店で販売。

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