江の島の参道奥に昨年11月3日、築92年の古民家を改装したコーヒーと定食の店「島舎(とうしゃ)」(藤沢市江の島2、店名としての島の文字表記は鳥の下に山)がオープンし、懐かしい雰囲気の空間や料理とともに、いつも入り口に座っている猫が話題になっている。
冨永夫妻と手伝っている絵美さんの母親。「ほとんどのお客さまが帰りがけに料理の感想を言ってくれるのがうれしい」
東京都内に住んでいた冨永誠さん・絵美さん夫妻が開いた同店。「ずっと都内で古民家を探していたがなかなか見つからず、エリアを広げてたどり着いたのが江の島だった」と誠さん。島でも最も奥に位置する江島神社奥津宮の近くで、決して人通りが多いとは言えないロケーションだが、「もともと都内でも人が来ないような路地裏をイメージしていたので、全く問題なかった」と続ける。
2人が理想とする「田舎のおばあちゃんの家」というコンセプトを基準に内外装や家具、什器、食器などをそろえた。契約時にはサッシだった入り口の引き戸は、わざわざ木製に戻したという。
調理を担当するのは、都内のデリ(総菜)店でシェフや店長を務めていた絵美さん。コンセプトに沿った定食のメニューは和食で全て手作り。お新香も自家製、ご飯は日替りで異なる具材を使いかまどで炊いている。「できるだけシンプルに、でも丁寧に。調理法にもこだわっているので大量に作れず、定食は3種のみ」だという。
本日の魚定食(1,512円)、本日の汁定食(1,296円)、日替わり定食(当日の内容により異なる)、山椒と生のりの鶏から揚げ(648円)、酒のさかな盛り合わせ(496円)、炊き込みごはんの焼きおにぎり(432円)。デザートは、白いおしるこ(594円)、スパイスラムレーズンケーキ、チョコレートケーキ、柚子のチーズケーキ(以上496円)など。ドリンク類は、島舎ブレンドコーヒー(594円)、アイリッシュコーヒー(756円)、野草茶(540円)、チャイ(648円)など。
店名は「島の中にある人が集まる家」という意味で、看板などに使っている文字は「島」や「嶋」「嶌」などの現在使われている漢字のルーツで、「江の島の歴史も感じてもらいたい」と命名した。「よそ者なのに温かく迎え入れてくださった。島の人たちは誰もがフレンドリーで親戚のよう」だという。
島には猫が多いが同店前にもいつの間にか2匹の猫が居着き、前を通る観光客がスマホやカメラを向ける。特に三毛猫はいつも入り口に座っており、人の出入りがあるときだけ道をあける姿が話題になっている。「一度も餌を与えたことはないのに」と2人は不思議がり、「名前がないので店長と呼んでいる」と笑う。
面積は130平方メートル、席数は25席。地下にも大きな空間があり、現在は使っていないが「ミニライブや落語などもできると思う」と活用法を探っているところ。
客層は30代以上の女性で一人や二人連れ、夫婦連れなどが中心。開店から3カ月半、読書したり、おしゃべりに花が咲いたりと長居する客も多いという。友人に勧められて横浜から来たという60代男性は「どこか懐かしく落ち着いて居心地が良い。かなり歩くがわざわざ足を運ぶ価値がある」と話した。
富永さんは「コンセプトはどこにも書いていないし発信していないが、伝わっているようでうれしい。都会に疲れた人がやって来てほっこりしたり、幸せな気持ちになったりして、記憶のどこかに残ってくれたら。猫店長も待っている」と来店を呼び掛ける。
営業時間は11時ごろ~18時。問い合わせは(TEL 0466-66-6252)まで。