印章と印刷の専門店「鎌倉はんこ」(鎌倉市御成町)が、東北の被災地で栽培された綿を材料にした「東北コットン紙」や発展途上国のオーガニックな植物原料から作られた「バナナペーパー」を使ったエシカル年賀状の取り扱いを始めた。
紙の見本とエシカル年賀状。手書きを前提に余白を多くレイアウトした。これに名前の一文字などのゴム印を押すだけでオリジナル感も出る
「はがきの印刷を受け付けながら、より思いが伝わるような工夫ができないかと考えていた」と発売のきっかけを話すのは同店店主の月野允裕さん。「タイミングよく社会貢献や途上国支援につながるエシカルな紙の情報を得て、年賀状として売り出すことにした」と続ける。エシカルとは、適正な価格で購入することで生産者の健康や経済、環境保全などを支援できるという概念。同紙を扱う企業によると、印章業界では初、鎌倉でも初の取り組みだという。
「東北コットン紙」は東日本大震災の津波で稲作が困難になった農地で栽培された高級綿の茎を材料とした紙。「バナナペーパー」はアフリカ・ザンビアのオーガニックなバナナから作られ適正な価格で取引されたフェアトレード紙。通常のはがきと比べ単価は高くなるが、和紙に似て肌触りや書き心地も良く温かみがある風合いだという。同年賀状には受け取った人が両紙の活動をネットで知ることができるようにあらかじめQRコードが印刷されている。
同年賀状はレイアウトも「書き手の思いが伝わるように既成の文章は印刷しないで手書きのスペースを大きく取った」という。枚数が多い場合は手書き文字をスキャニングして印刷するサービスも受け付けている。
100種類以上のオリジナルの年賀絵柄印や落款印、住所印なども用意。定番のデザインだけでなく個人でデザインした文字や図案もゴム印に製作する。「合わせて使っていただけると、よりオリジナリティーが出て気持ちが伝わるはず」という。
月野さんは「鎌倉には意識の高い方や環境に配慮する方も多く、興味を持ってくださる方も多い。エシカルな活動を鎌倉から発信していくきっかけになれば。大手チェーンなどでは難しいかもしれないが、個人の店だからこそできる取り組み。今後は店内で使う紙も全て切り替えていきたい」と話す。
営業時間は10時30分~18時。水曜定休。同年賀状は3枚セットで371円(税抜き)。年内の営業は12月27日まで。印刷は同25日まで受け付ける。