相模川で発見された鎌倉時代の鐙を一般公開-平塚市博物館の春期特別展で

展示中の「鉄製舌長鐙」1点(左側)。足を乗せる「踏込(ふんごみ)」と呼ばれる部分が長い

展示中の「鉄製舌長鐙」1点(左側)。足を乗せる「踏込(ふんごみ)」と呼ばれる部分が長い

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 平塚市博物館(平塚市浅間町、TEL 0463-33-5111)の春期特別展「平塚と相模の城館」で現在、鎌倉時代の希少な資料と認められた「鉄製舌長鐙(てつせいしたながあぶみ)」が一般公開されている。

前正面から見た鐙。足先の膨らんだ部分は「鳩胸」という

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 この鐙は1940(昭和15)年ごろ、同市を流れる相模川に架かる馬入鉄橋(久領堤)の下流付近で砂利採取作業中に発見されたもの。近隣住民の保管を経て2004年に同館に寄贈。昨年始まった本格調査で、馬具研究の第一人者である「馬の博物館」理事の末崎真澄さん、東京国立博物館上席研究員の池田宏さんに鑑定を依頼し、鎌倉時代の「武蔵鐙」であるとの所見を得た。鐙が見つかった馬入地区は、鎌倉時代以降、相模国沿岸部における交通の要衝であり、馬具との縁も深いと推察できるという。

 鎌倉時代の同種の鐙は国宝を含め全国で3例のみで、今回が4例目。鐙は極めて実用的な道具であり消耗が激しく、消耗した場合でも鉄材として再利用されたり、奉納品や武家の宝物として伝世されたりするケースが大半で、実際に使用された形跡があり、「出土」という形で使用場所との関係が捉えられるケースは極めて少ないという。同館学芸員の栗山雄揮さんは「全国的にも珍しく、地域の歴史資料として高く評価できる」と話す。

 「舌長鐙」とは、馬上の運動性、安定性を重視した武家を中心に踏み込み部を長くした鐙で、この種の鐙は武蔵野国での生産が多かったため「武蔵鐙」とも呼ばれる。鐙の残存高は25センチ、長さ34.4センチ、最大幅10.5センチ。刺金下には花弁形の鉄製紋金物を施してあり、鉸具頭(かこがしら=バックル)の上部のちぎれたような欠失は、「実際の使用に伴う破損と摩耗と考えられる」という。

 栗山さんは「この鐙を含め、春期特別展では『城』をキーワードに平塚の中世の歴史と考古資料や城館址の情報・写真を多数展示する。ぜひ郷土の歴史に触れてほしい」と話す。

 開館時間は9時~17時(入館は16時30分まで)。月曜休館(4月30日は開館)。入館無料。5月6日まで。

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