日本のロケット発祥地・平塚からたどる特別展 初公開の研究ノートや写真も

H-IIAロケットの1/25模型と搭載されているLE-7エンジンの配管部分。配管は旧海軍火薬廠跡地にある横浜ゴムで開発製造されている

H-IIAロケットの1/25模型と搭載されているLE-7エンジンの配管部分。配管は旧海軍火薬廠跡地にある横浜ゴムで開発製造されている

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 平塚市博物館(平塚市浅間町)で10月22日、平塚が発祥といわれる日本のロケット開発の歩みをたどる特別展「知られざる平塚のロケット開発展」が始まった。

パネルにした増田和之さんのノートの一部を手にする学芸員の藤井さん。研究の過程や記録のほか、当時の各国の先端技術なども記されている

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 平塚には1905(明治38)年から旧海軍火薬廠(かやくしょう)があり、兵器として使う固形燃料ロケットの技術開発が行われていた。この技術が戦後、「日本の宇宙開発の父」と呼ばれる糸川英夫さんが開発したペンシルロケットやその後のカッパロケットなどに受け継がれていったという。

 「平塚が発祥であることに加え、現在も市内の企業などがロケット技術の根幹を担っていることを市民にもっと知ってもらうために、展示を企画した」と話すのは、同館学芸員の藤井大地さん。「防衛省から借りた設計図、JAXAにあった『国産ロケット1号』として新聞に掲載された紙模型の元の写真、当時火薬廠に勤務していた増田和之さんの家族から寄贈された研究ノートなど初公開や貴重な資料も多い」と続ける。

 展示は3部構成で、第1章では設計図やノート、論文、写真などを展示し火薬廠でのロケット開発の歴史を振り返る。第2章では戦後どのように技術が糸川教授に渡り、どのように変遷を遂げていったか、第3章では市内の企業や大学が取り組んでいる技術開発や研究について見ていく。

 ロケットの部品などを開発製造している市内の企業の中から、今回は横浜ゴムのH-IIAロケットのLE-7エンジンの配管、日本特殊塗料の1000度の超高温に耐えられる塗料スカイハロー、日本ムーグのわずかな電流で油の流量や方向を高応答で制御するサーボバルブなどを展示。15年前から学生を中心にロケットを製作し実験を行っている「東海大学学生ロケットプロジェクト」、高野敦教授が率いる研究室メンバーで構成された「神奈川大学宇宙ロケット部」のロケットも展示した。2校とも市内にキャンパスがある。

 期間中は、JAXA名誉教授・的川泰宣さんの講演「日本のロケットの歴史」のほか、ロケットの原理が学べる「ストローロケットを作ろう」「傘袋ロケットを作ろう」「スーパーボールロケットを作ろう」「火薬ロケットカーを作ろう」など子ども向けのワークショップも行う。藤井さんは「自分が子どものころ参加したイベントで宇宙が好きになった。今度は自分が子どもたちに面白さを伝えたい」と抱負を話す。

 11月2日には、同館のプラネタリウムに、静止気象衛星ひまわり9号を搭載したH-IIA31号機ロケットの打ち上げの生中継映像を投影した。

 藤井さんは「この博物館がある場所も火薬廠跡地。直接技術を継承したわけではないものの、市内の企業が現在もロケット部品などを開発製造しているのも不思議な縁。今回の展示で平塚が宇宙開発の一翼を担っていることを知っていただくきかっけになれば」と話す。11月20日、12月10日の13時~13時45分には藤井さんが展示解説もする。

 開館時間は9時~17時(入場は16時30分まで)。月曜休館。入場無料。12月18日まで。

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